picture by. MIZUTAMA
覚えてる?
お前と出会う前のオレを。
◆
遥か遠く、誰も覚えていないいつかの日々を、お前は、知っている?
遠い昔、と言ってもいいほど今はその真実を知っている人々もいなくなるほど昔のいつか。
その日は、世界で唯一の究極生命体が誕生が遠くなかった日。
そのことを知っている人は多かったが、だけどその生命体にもっと近い存在がもう一人いることを知っている人は少なかった。
いや、近いものではない。寧ろオリジナル、根本となる存在。
プロフェッサージェラルドが地球で発見して、まだ名前もなかった彼にソニックという名前までつけて連れてきた青い針鼠だった。
何よりも足が速い、目を離せない美しさを持っている生命・・・。ジェラルドは彼を見てプロジェクト・シャドウを完成した。
だけど自由が大事な彼はそう簡単にジェラルドに付いて行こう考えは全くなかった。
「嫌いだね!オレがなんで!Are you kidding?!」
それでもソニックより諦める気が全くないジェラルドも負けなく続けて説得した。
多くの言葉がソニックの耳に届いた。それは彼が一ヶ月掛けても聞けるかどうか分からない量だった。
一人でいるよりは少しいいかも知れない。とソニックは思った。
“寂しい”ということをソニックは正確には分からなかった。だけどそれがどんなことかは体で分かっていた。
そんなことを考えるソニックの気を、一気に動ける言葉が聞こえた。
――友達ができる、と。この頃のソニックには理解出来なかったことを。
マリア、と言う名を持っている孫娘がいると言った。そしてもう一人が出来ると。
ソニックにはどうでもいいことだった。そんなはずだったが、その先にある未来を考えてしまうこともどうしようもなかった。
「OK。行くぜ」
その言葉で、ソニックは一緒で行くことを決めた。どうせ、一人で出来ることはもう飽きていた。
新しいことが出来たら、少し不自由なことは我慢してもいいじゃないかと自分で慰めながら。
それは、結果的には悪くなかった。病気があるとはいえ、幼いマリアは優しくて何でこんな子が痛いかと思うほどだった。
ソニックがそこですることは多くはなかった。ただ、少し研究員の相手になってあげたり、マリアと話したり、そんな簡単なこと。
前者の場合はつまらなかった。いつも言うことを絶対聞かなくといけないし、興味を引くようなこともなかった。
だけど後者の場合は違った。もっとも、自分が言うことを聞く相手がいるのがソニックはたまらなく好きだった。
ソニックが言うことは彼が今まで回っていた世界の風景で、それが見れないマリアはより正確にソニックに聞いてみた。
いわばよく合う相手だったという。そう過ごしている日々に、プロジェクトは順調に進んでいた。
◆
「ねえ、それきいたの?」
「なにがだ?」
「わたしたち、もうすこしあとにうちゅうに行くかもしれないって。もどるのは、はやいって。」
ソニックはマリアのその言葉にそうか、と肯定しながら空を眺めた。実は最近、ここではもう不十分だとかなんとか言っていることを見たからだ。
彼が行ってみなかったところはもう、空の上だけだとしてもよかった。運がどれだけ重なったら一度でも行って見れるのか?
そのとき、マリアがソニックの手を引っ張りながらソニックに聞いた。
「ねえねえ、うちゅうってどう?きれいなの?」
「Well?オレも行ったことないんだ」
「ソニックが行ったことないところもあるね」
「それは当然。オレは神ではないんだぜ?」
ソニックは笑いながらマリアをみてそう言った。
早く戻る、それは知らないことだった。明らかなことは、研究がどのくらいまで届いたら、なかなか進まないと言っているようだった。
ソニックはどこまでも手伝っているだけ、全くと言っても良いほど実験の結果には興味がなかった。
綺麗なものが好きなマリアがソニックがふたり!とか言いながら連れて行こうとしたらあくまでも拒絶していた。
だけど、何故か今度だけは行ってみようか、と思ってしまった。
見たこともない大きさを持つ研究所はそこからは出られないマリアのために彼女の気に入るような色んな施設があった。
研究はその下、地上の広さほど広い地下で密かに行っていた。
ソニックはマリアが食事をする間に、だから誰も自分に気を向けない時間に一度も行ったことない地下に向かった。
光が少ない廊下を通り過ぎて、奥深い中心部に着くと、ソニックの目に見えるものは中で人が永いでも良いほどの大きい試験管だった。
「・・・」
ソニックは周りをゆっくり歩きながらソニックはその中を覗き込んだ。
中にはその内部をいっぱいに満たしている水と、幾つかの管に囲まれていてよく見えない黒い何かが・・・。
「あれは・・・」
ソニックはよく見えないあの形をもっとちゃんと見るために近づいた。
集中してよく見れば、それは黒くて、ソニックによく似ている針鼠だった。
「気に入るかい?」
「・・・!」
後ろでそんなソニックの様子を似ていたジェラルドが声を掛けながらソニックのそばに近寄った。
ソニックはいきなりのことに驚いた表情を隠せずにジェラルドを見て、勝手に入ってごめん、と言った。
ジェラルドは構わないというように首を横に振った。そのまま何も言わなかったので、ソニックもまた試験管の中を見た。
「守ってあげなさい」
「?」
「君の姿を真似って成長しているように見えるが、全然違うじゃ。いろんなことを教えて、見せてあげなさい」
「You talk me that I will become a baby sitter this time?」
「嫌いだったらやらなくてもいいのじゃ。だけど彼は人間ではないから、われらが教えることには限界がある」
「・・・」
その言葉にソニックは少し悩むような顔をした。悩むとはいえ、実はソニックの中で悩みなんかはなかった。
自分と似ているもの。その生命に、切りにくい関心を持ってしまったから。
だけどその思いがばれてしまうのがいやで、ソニックはわざわざ不平をぶちまけた。
「なんでオレだよ!チェ、面倒だな!」
それはもう、誰も覚えていない、たった一人の大事な思い出。
好きになった誰かを出会ったとしても、相手は覚えていない、切ない記憶。
だけどそれでもいいと満足したひとの、大切なこと。